ここでは、LINK-J SCOOPプロジェクトの一つ「教育×医療」プロジェクトによる企画「『教育と医療』のつながりを考える」の内容を掲載しています。
開催は、ポスターのとおりです。
谷村麻衣(たにむら まい)
脇坂みのり(わきざか みのり)
村尾大樹(むらお だいき)
西澤昂志(にしざわ こうし)
森田輝(もりた ひかる)
special thanks
スケジュール
14:30 受付開始
15:00 アイスブレイク
15:15 ミニディスカッション①「発達障害」by坂井
16:30 ミニディスカッション②「いじめ」by脇坂
18:00 終了
坂井「この会は、LINK-J SCOOPプロジェクト「教育×医療」による企画です。本日は、この企画の代表の末永さんが進める予定でしたが、諸事情により参加できませんでしたので、代わりに坂井が進行を務めます!」
一同 「よろしくお願いします。」LINK-Jは、ライフサイエンスに関わる人々が「集まる」・「つながる」・「育つ」・「はばたく」ための事業を行い、新たなライフサイエンス産業創造の機会を提供している一般社団法人。SCOOPはLINK-J Sandbox Co-operative Projectの頭文字を取ったもので、LINK-J Sandboxの企画の一部である。
坂井「では…さっそくはじめるまえに自己紹介からしていきましょうか。」
坂井「滋賀医科大学医学部の5年生の坂井です。私は、実は他の大学を出ているんですが、医学部に行こうと思い立って、再び医学部に入り直しました。将来は、精神科とは違うんですが心療内科に進もうかと考えています。」
森田「京都府立医科大学医学部の5年生の森田です。精神科志望で児童精神科目指しています。教育では、学校のしくみとか歴史自体に興味が有ります。」
村尾「立命館大学経営学部の4年生の村尾です。国際会計士を目指していて、仕事では経理関係をやりたいと思っています。学部は医療系ではありませんが、元々医療が好きで、何か関わることができればと思っていたので今回は参加させてもらいました。来年4月からは企業に就職する予定です。」
西澤「滋賀大学教育学部の4年生の西澤です。フィリピンの現地の学校に行ったり、海外にも何度か行きました。来年からは、英語専科の小学校教員になる予定です。」
脇坂「滋賀大学教育学部の4年生の脇坂です。大学時代は、スクールサポーターというのを4年間続けていました。大学では数学専攻でした。来年からは小学校教員になる予定です。」
谷村「滋賀医科大学医学部の5年生の谷村です。こういった会以外にもいくつかの企画をよくしています。将来は、強いていうなら脳神経外科を考えています。」スクールサポーターは、小学校や中学校での学習支援、非行防止を推進するボランティア人材。自治体ごとに様々な組織で運営されている。京都のスクールサポーターについて。滋賀のスクールサポーターについて。
坂井「それでは、私から、医療側からのテーマの提起として、"発達障害"を取り上げたいと思います。こちらからプレゼンをするというよりは、みなさんと一緒に調べながら発達障害について考えていければと思います。発達障害というと、みなさん、どういったものが入ると思いますか?」
坂井「いくつか取り上げるとこんな感じになります(スライド)。今回は、標準精神医学という本を参考に取り上げました。ちなみに、そちらに標準精神医学の本は置いてありますので、ぜひ参考にしながら聞いてください(笑)」
西澤「分厚い…。」
森田「チックとかも発達障害の範疇なんですね。」
脇坂「教職のほうでも発達障害として勉強しますね。」
坂井「今回は、いくつかある発達障害の中でも、AD/HDとASDを主に取り上げたいと思います(スライド)。」
坂井「AD/HDは、不注意、多動性、衝動性を症状とするもので、有病率は5%くらいと言われています。クラスに1人くらいはいるかなという感じですね。」
坂井「ASDは自閉症スペクトラム障害ということで、みなさんが想像するいわゆる自閉症と、アスペルガー症候群などがここに入ります。アスペルガー症候群のほうは、コミュニケーションの障害などが症状になります。」
坂井「さっそくなんですが、この2つについてちょっと話してみましょう。2チームに分かれて、それぞれAD/HDとASDの症状3つとその体験談について調べてみてください。」
一同 坂井・谷村・村尾はASDについて、脇坂・西澤・森田はAD/HDについて、調べて話し合いを進める。
坂井「では、それぞれについて話し合ったこと、調べたことに関してそれぞれのグループからお話してもらえればと思います。AD/HDについて、そちらのチームからお話してもらってもいいですか?」
脇坂「私たちのほうでは、結構学校での現場の話がメインにはなりました。症状は、先ほどちょうどおっしゃっていた不注意・多動性・衝動性が3つになります。体験談というか、私達の実感としても小学校の一クラスあたりにも3〜4人くらいはAD/HDっぽい児童というのはいて、小学校の方でもAD/HDの児童についての対応策は進んでいます。例えば、注意が他のところにいかないように、授業の時には教室の掲示物を隠したり、授業の内容を事前に教えてあげて、進んでいくたびに"今はここまでやってるよ"と視覚的に分かりやすく伝えたりと言った手法があります。あとは、TT=Team Teachingというのが最近はよく言われていて、担任の先生+他のスタッフが全体の進度についていけない児童の対応をしたりといったような方法も取り入れられています。私がやっていたスクールサポーターとしての仕事も、Team Teachingのスタッフとし入るような仕事でした。」
森田「学校のほうでもそんな風に、対応がある程度形式化されつつあるのは知らなかったですね。」
脇坂「私はさっき話していて知ったんですが、AD/HDにはお薬を使うという方法もあるんですね。実際お薬の使用というのはどうなんですか?」
西澤「実際にはあまり親の方も使いたがらないといったような印象もありますね。」
森田「使われるお薬はいくつかありますが、よく使われているものの一つに、コンサータと言ったお薬があります。脳に作用してドーパミンの量を調整するようなお薬ですね。他にも、薬によって効果時間が違ったりします。」
脇坂「中毒とか副作用とかっていうのもやっぱりあるんですか?」
森田「どのお薬も必ず副作用といったものはあるものですが、基本的には副作用と効果のバランスを考えた時に有効ということで投薬という判断にになると思います。」
脇坂「薬以外での治療と言えばどういったものがあるんですか?」
谷村「いわゆるCBT=認知行動療法といったものやSST=Social Skill Trainingといったもの、環境を変えたりとか、そういったものがありますね。医師によって投薬の必要性の基準は違ったりもするみたいですが、私の知る医師の方では、小児は出来る限り投薬以外の方法で治療を試みようとする方などが多くいます。具体的な方法は、その人の状況や背景を考えて、担当医の先生の判断次第にはなります。」
西澤「AD/HDを疑う児童がクラスの中にいた場合、クラス全体の進度とその児童に合わせた進度をどうするかといったことが課題になったりはします。ある程度軽症なら普通学級で、ある程度以上の症状があれば支援学級のほうで対応するなどの判断も難しいです。」
坂井「では、次にこちらのチームからASDについてお話しようかと思います。」
坂井「ASDではコミュニケーションの障害があることが多いですが、それによって本人がストレスを抱えてしまったりといったように副次的な影響があることもあります。また、他には興味の限定があったりして、自分の世界といったものが強いことも多いようです。」
谷村「発達障害については、病院での患者説明の際に、実は患者の親も発達障害らしき場合があることもあり、その場合には説明自体に苦戦することもありますね。」
脇坂「自閉症もある程度遺伝するんですか?」
坂井「それについてはまだ研究中のところでもありますが、遺伝が影響する部分があることはわかっているようです。環境因子の影響などもあります。」
森田「遺伝子に関しての研究は結構されていて、遺伝子の異常が必ずしも遺伝するというわけではないですが、そのあたりは僕もちゃんと調べていないのでこうだとはっきりは言えません。」
西澤「子供だけじゃなくて、発達障害については親のほうのケアも必要になると感じます。」
脇坂「学校では、保健室やカウンセラーといったところとの連携が大切になると感じます。」
坂井「学校の保健室やカウンセラーと医療機関との連携も大切ですね。小児科の先生と精神科の先生とでは、どちらに行けばいいのか、というのはどうでしょう?」
森田「地域や関連病院によって、小児科の先生が主に対応しているところと精神科の先生が主に対応しているところが有ります。児童精神科といった専門は小児科からでも精神科からでも取れますよね。実際には小児科から先にかかる人が多いように思います。トレーニングを積んだ児童精神科の先生がいればその人のところに診てもらうのが良いのではないでしょうか。」
谷村「でも、医師との相性というのも実際のところあって、うまく馴染む場合とそうじゃない場合があって、医師と相性が合わない場合、他のところにかかるということもあります。」
脇坂「相性という点では、教員と児童の相性みたいなものでも同じですね。」
坂井「これからは、脇坂さんより2つめのセッションをお願いしたいと思います。」
脇坂「教育のほうからのテーマとしては、今回"いじめ"を取り上げます。」
脇坂「まずはじめに、みなさんにお聞きしたいんですが、"いじめ"と"いじり"の違いについてどう思いますか?」
谷村「いじりといじめっていうのは受け取り手がどう思うかというのも大きいと思っていて、セクハラが受け取り手が嫌がらせだと思ったらそうなるように、いじめに関しても、いじりが相手にとって不快なものになっていけばいじめになるんじゃないかなーと思います。」
村尾「いじりはどっちも楽しめるもの、愛があるものという感じがしますが、相手を傷つけたり不快なものにさせようというものはいじめになる気がします。ひどいことに関して小学生なんかは加減というものがないですよね。」
西澤「たしかに加減はないですね(笑)」
脇坂「それぞれ意見をくださってありがとうございます。私としても、いじりからいじめに発展することがあるんじゃないかなと思っています。では、いじめに関してなんですが、これはちゃんと定義があります。いじめ防止対策推進法によれば、このように記載されていて(スライド)、重要なポイントとして、"当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの"という記載があります。"インターネットを通じて行われるものを含む"というものが記載からもわかる通り、ネットいじめもその対象となっています。」
森田「インターネットのことも記載されているんですね。」
西澤「そうですね。」
いじめ防止対策推進法は、平成25年に公布、施行された。
脇坂「次に、いじめにはどのような種類があるかについて見てみますと、"集団いじめ"、"ネットいじめ"、"無視・シカト"などがあります。この中でも、ネットいじめに関しては、最近の小学生へのスマホやSNSの普及もあり、問題にはなりますが目の前で展開されるいじめではないため、その発見と対策が課題になっています。特に、まだオープンな場で起こる発見できるものならよいですが、LINEのようにクローズドな空間で起こることに関しては教師が気づきにくく、見つけられないこともあり、より注意が必要になります。」
脇坂「最近では、警察と協力してSNSでの使い方について、実はネットの世界ではこんなに怖いこともある、といったようなことや家庭でのSNSの使い方について考えるように教育活動なども行われています。」
脇坂「次にこの図では、いじめの報告の経年推移を表していますが、これについて何か思うことはありますか?」
森田「平成24年から25年で急に増えていますね。」
脇坂「そうです。この時期にあったことって誰か覚えていますか?」
村尾「中学生の自殺の事件ですよね。」
脇坂「そうですね。よく覚えてらっしゃいますね。"大津市中2いじめ自殺事件"といったものがあって、これが全国に広がって、"おたくの学校は大丈夫か"といったような問い合わせも増えて、学校側もアンケートを取ったり、いじめについての取り組みを強化したことによって報告数が増えました。」
坂井「Wikipediaを見ていますが、いじめの内容もさることながらそれに対する学校側の対応が問題視された事件ですね。」
西澤「蜂の死骸を食べさせようとしたとかありましたね。ひどいですね。」大津市中2いじめ自殺事件(Wikipedia)は、2011年10月11日に滋賀県大津市内の中学校の当時2年生の男子生徒がいじめを苦に自殺するに至った事件である。(Wikipediaより)
脇坂「では、実際いじめがおこったときにどのように対応すればいいのか、といったことに関してですが、いくつか重要なことがあります。まず一つ目に、事実確認を行うこと。これは、事実確認が曖昧なまま行うと、やったやってないの言い合いになり、解決へと中々進まないためです。事実確認については、いじめた側、いじめられた側、双方から聞き取りを行います。2つ目に保護者への対応です。いじめが発覚したときには、かならずその当日に保護者へと連絡を取ることが大切で、その日のうちに家庭訪問するようにします。とはいっても、親も働いていて連絡が取れないこともありますが、そのときでも、次の日などと先延ばしにせずに、必ず当日に連絡を取るようにします。3つ目にチーム学校というフレーズがありますが、担任の先生1人で抱え込まずに、学校全体で取り組むということが重要です。教師も1人で抱え込んでしまってダウンしてしまって離職するといった事例もあります。学校と家庭と地域という3者が連携することが重要です。こまめに情報共有をして、地域でも子供を見守っているということをアピールすることが大切です。最後に学級全体への指導ということも重要になってきます。結局は、どうしてもいじめをなくすことはできないかもしれませんが、いじめが起きにくいような雰囲気づくりは重要で、そこでは担任の技量が求められるところでもあります。アンケートを実施して状態を把握したり、道徳教育も大切になってきます。」
脇坂「ということで、実際にいじめについて考えるために、みなさんからのいじめの体験談に関して話し合いたいなと思います。」
坂井「私が通っていたところでは、小学生くらいのころにはありましたが、高校生くらいにもなるとみんなそんなことをしているよりは勉強したほうがいい、みたいな雰囲気だったので、いじめみたいなものはなくなってましたね。」
谷村「私のところもそうでした。」
森田「でも、それはそれなりの生徒の質が高い学校だったからというだけなような気もします(笑)」
脇坂「私のところでは、まだ高校でもあったように思います。」
村尾「僕のところは、わりと学校も神経質になっていたところがあって、学校側が毅然とした対応をとって、場合によっては停学の措置を取ったりしていた事もあって、それほどいじめが深刻化していなかったように感じます。」
西澤「そういった厳しい対応が抑止力になっていたということですね。」
村尾「そういう風に厳しくすることがどうなのかはわかりませんが、実際そうだったという風に思います。」
森田「大学でもあるところはありますね。」
谷村「そうですね〜(笑)」
脇坂「そうなんですか。」
坂井「やはり狭い社会だと起こりやすいように思います。」
森田「それに関しては、大人でも子供でも変わらないなというように感じます。」
脇坂「いじめによってどのような問題が起こるか、ということに関してはどうですか?」
森田「刑事事件とかですかね。個人的に疑問なんですが、校医のような感じで、学校に弁護士ってついてないんですか?」
脇坂「そういうのはいないですね。」
西澤「そうですね。」
坂井「いじめでもし顔の怪我とかしたら本当に大変ですね。顎の骨とかを折ると、食事ができなくなったりとかいうこともあります。」
脇坂「では、実際にいじめが起こった時にどのように対応するのがよいか、について皆さんと話し合ってみたいと思います。」
村尾「例えば、僕のところだと、さっきも言った通り、学校側が厳しい態度を取っていたことで、いじめる側の人にも他の人が近づかないようにしようといったような雰囲気が会ったりして、抑止効果は会ったと思います。」
坂井「力での制圧ですね(笑)」
森田「京都のように警察OBがスクールサポーターとして活動しているところもあるようですが、教師が1人で授業といじめなどの対応をするのは少し無理があるように感じます。また児童・生徒だけに解決をさせようとするのも酷です。治安維持部隊というとあれですが、そういった、いじめに対して対応できる権力のある外部機関があればいいのではないかという風に思います。」
西澤「僕は、いじめに対してアプローチの仕方も大切だと思います。抽象的にいじめについて考えましょうといっても、中々聞いてくれないことも多いです。僕は前にあるところでりんごをつかって小学生にいじめについて説明した経験があります。見た目には全く同じの2つのりんごに対して、片方には"きれい、かっこいい"などのようにすごくほめ、もう片方のりんごには"ださい、汚い、くさい"などのようにすごく悪口を言うようにして、それもそのときは和気藹々と楽しくやるんですが、その後に、"じゃありんごを切って中を見てみよう"と言ってりんごを切って中をみるということをするんです。そのときに、褒めていた方のりんごは綺麗な中身のままにしておき、さきほど悪口を言っていじめていたりんごをうまい手法を用いて中身がドロドロで汚くなるようにしておくんです。そして、それを見せて、"ほら、外身ではわからいけれど、悪口を言っていた方は中身はこんなにドロドロだよ。どう思う?"といった風に問いかけると真剣に悪口を言うのがよくない、と言った風に考えてくれました。」
森田「それはすばらしい手法ですね。」
坂井「すごいです。」
谷村「私は、前に小学生たち2人が喧嘩していたときに少し上の学年のお姉さんが来て、喧嘩をうまく仲裁して2人をたしなめたところを見たことがあります。そのお姉さんが少し上の学年だったからできたことかもしれませんが、そんな風に子どもたちで解決できるならそれはそれで良いように思います。」
脇坂「たしかに、異学年との交流というのは重要視されていて、小学校高学年の児童が低学年の児童と交流を持つというような取り組みをしているところがあります。」
坂井「たしかに、先生に相談に行くのが少し勇気がいるような場合でも少し上のお兄さん、お姉さんなら相談しやすいといったこともあるかもしれませんね。」
坂井「今って小学校にスクールカウンセラーのようなものはないんですか?」
村尾「電話番号が書いてあるカードみたいなのはもらいますけどね。」
坂井「学校に駐在しているカウンセラーさんのようなのって児童は利用したりするんですか?」
脇坂「実際はあまり利用されていないところが多いように感じます。」
西澤「児童も、"同級生に見られたら"と思うとなかなか行きづらいところがあるように感じますね。」
脇坂「私は、いじめに対しての対策としては"声掛け"というのは重要だと思います。子供に声掛けをして信頼関係を作り、いじめをできるだけ発生させないような雰囲気を作るというのが大切になってくると思いますね。」
坂井「今日はみなさん、お集まりくださりありがとうございました。また、次回以降にも今回のことをつなげていければと思います。」LINK-J SandboxのSCOOPプロジェクトについては、LINK-J Sandboxのホームページにてそれぞれのプロジェクトの進捗報告などを掲載されています。このプロジェクトに興味のある方は、LINK-J SCOOPのFacebookページへとご連絡ください。
滋賀医科大学5年 医学部